認知症ケアポート「Rapport:らぽーる」認知症ケアの相談室について

1.認知症の人とそのご家族への介護支援をします。

・地域で暮らす認知症の人が認知症になっても自分らしく生きることができるように支援します。
・ご家族へのメンタルケアをはじめ、BPSDの理解と関わり方をサポートします。

2.認知症の人を介護する対人援助職者を対象に、病気の理解・ケアの方法・認知症の人への関わり方を共に考えます。

 ・認知症の人を支える様々な職種と協働しながら、認知症の理解を深めるためのサポートをします。
 ・様々な行動・心理症状(BPSD)への関わり方をパーソンセンタードケアを軸に、共に考えます。

3.認知症の人と関わるあらゆる職種への、認知症の理解・介護技術などの指導をします。

 ・認知症の人を支える仕事を目指す人の育成機関・教育機関への出張講習をします。
 ・認知症の人の介護を実践している施設等の職員への出張介護講習・新人研修・グループ学習等をお手伝いします。

4.地域社会で認知症の人を支える街づくりを目指し、啓発活動・ボランティア活動に参加します 。

 ・認知症の人を支えている地域の各団体への支援・出張講習会活動・啓発活動をします。
 ・認知症介護・子育て・在宅療養・などのサポートをしているNPO・ボランティア活動等に参加します。
 ・地域の認知症在宅介護者や子育て中のお母さんたちと交流し、困り事や悩み事、息抜きなどのサポートをします。

現在、認知症の人に関わるあらゆる対人援助職者を対象に、認知症ケアポートRapportと訪問看護ステーションエムステージが協賛で≪認知症の人への介護・認知症の理解・認知症の人を抱える家族へのサポート≫を目的に隔月で勉強会を行っています。参加は自由ですが事前に申し込みが必要です。認知症の人の介護に関わるあらゆる対人援助職者の方たちと、認知症の人が豊かにその人らしく生きられるように、ともに学び考えてゆこうと思っています。
その他に、認知症の人が生活しているグループホームやデイサービスなどのスタッフの方への出出張・前講習活動。地域社会や病院・家族会などへの出張講習や啓発活動など、認知症の人に関わるあらゆる人と伴に学び続けていたいと考えています。

認知症に対する非薬物的かかわり 「その1.回想法」 

参加する高齢者にとって、個人内の主な効果としては
1. 感情や意欲の回復
2. 社交性の向上
対人的効果としては
1. 会話の活性化や楽しみの共有
2. 参加者同士の絆の形成・・・・があげられる

グループセッションでは参加者以外へも強く影響を与えることがあり、特に参加している介護スタッフにとって大きな意味があることが知られている。例えば、参加した高齢者についての見識が深まり、普段のケアでは気がつかなかった、参加者の新たな一面が理解できるようになったりする。その方への尊敬の念が深まったり、あるいは介護への意欲が高まったりすることもある。このことは認知症高齢者など、コミュニケーションの取りづらさをスタッフが感じている場合に、一層効果的である。

高齢者にとっての回想法の意義
○記憶を呼び起こす手がかりになる
○失われた自信や不安などの感情への効果
○社会や生活との接点を生み出すこと
○「なじみ」の関係を作り出す。

回想法のやり方
○本人が望んでいることが大前提
○適度な時間と刺激量

・会場への誘導(BGMを流す) ・始まりのあいさつ ・自己紹介や言葉による回想の導入
・写真や道具を用いて回想を展開 ・終わりのあいさつ ・会場から退出(BGMを流す)

○簡単なルールの説明:会に参加するときの簡単なルールを説明する(カードに書いてもよい)

・回の開始の時間と終わりの時間
・テーマ≪回のお題≫は決まっているものの、話がそこから逸れてもよいこと
・気分や体調によっては、参加しないでも良いこと
・うまく話せないときには、≪パス≫をしてもよいこと
・話したくないことは話さなくてもよいこと
・うまく話すことができなくてもよいこと
・楽しむことが大切であること
・会の中で話された事はその場限りのこととして、他言はしないこと

基本的には自由に何を話してもよいことを伝え、他の人には知られたくないようなお話が出た時には、グループの中だけにとどめておくと安心して発言することができる。

タクティールケア

「タクティールケア」とは、手で触れることによって皮膚と皮膚とを通じて行われるコミュニケーションに重点を置いた認知症緩和ケアの手法です。
スェーデン発祥で、もともと未熟児のケアに行われていたケアの方法で、1960年代に看護師によって行われるようになりました。最近では、認知症ケアの補完療法として取り入れられています。
他にも、癌の緩和ケアやストレスケアなどにも活用されています。
手でやさしく包み込むように触れることで、肌を通じてのコミュニケーションにより、7分後にはオキシトシンというホルモンが分泌され、ケアする側ケアされる側双方に安心感や信頼感が生まれ、不安やストレスの軽減、リラクゼーション効果や鎮痛効果があるとされています。
やわらかくふれることによって相手を認識し、自分の身体への認識と理解を促します。自分と相手の認識がうまれてはじめて、相手への信頼が芽生え、こころのやすらぎをつくることができます。
また、接触受容体が刺激されることによって、安心と信頼のホルモンと呼ばれるオキシトシンの分泌を促します。血管内に放出されたオキシトシンが身体全体に効果を生み、沈静化の作用を生み、不安感・恐怖感を緩和することが可能です。

【オキシトシンoxytocin】脳下垂体後葉ホルモンの一種。子宮筋に収縮を起こさせ、分娩を促すほか、乳腺の平滑筋を収縮させて乳汁の分泌を促す。哺乳類に広く分布。子宮収縮ホルモン。
長年連れ添った夫や妻,あるいは親しい関係にある者と接するときに盛んに分泌されるホルモン。互いの結びつきを長くする作用があります。
このオキシトシンの効果で近年注目を浴びているのが親子の絆を深めたり、人と人との信頼関係を生み結びつける働きです。オキシトシンの効果で注目されているのが、人と人とを結びつける効果、信頼感を高める効果、愛情を深める効果、安心感を生む効果です。
マウスの実験では、オキシトシンを注射で大量に投与すると、寝てしまう効果があります。
オキシトシンを投与して心が静まり、安らかになると最終的に動物は寝てしまうようです。

アロマセラピー・マッサージとの違い

手法 主な概要

アロマセラピー

(AromaTherapy) 精油(エッセンシャルオイル)によって嗅覚を刺激し、香りによって様々な効果を得る療法。
【目的】リラクゼーション・リフレッシュを目的とする。
【効果】身体や精神の恒常性の維持と促進。美容・健康などの効果。
(※フランスでは主に不調な身体のケアや代替医療に用いられる

マッサージ

(Massage) 皮膚に触れ、身体を押しほぐすことで新陳代謝を促し機能を回復させる手技療法。
【目的】静脈血液循環の改善・リンパ循環の改善を目的とする。
【効果】血液を活性させることによって健康増進の効果。

タクティールケア

オイルを使い、手や全身をやわらかく刺激する緩和ケア。
【目的】相手とのコミュニケーションと、認知症の周辺症状の緩和を目的とする。
【効果】興奮状態や不安感・痛みなど様々な諸症状の緩和。

タクティールケアの目的

オイルを使って優しく包み込むようなマッサージを行うことでさまざまな効果がえられます。優しい刺激の少ないタッチで、穏やかさ・安心感・心地よさを得る。皮膚を通して相互にコミュニケーションをはかる。言葉で上手く伝えきれなくても、皮膚を通して言葉以外に確実に通じるものがあります!そこには信頼感・大切にされている・認められているなどの感情を充たすことができます。
認知症の方などは、ともすると身体の感覚を忘れてしまいがちになります。認知症でなくても普段の生活で悩み事などで、頭の中がいっぱいになり、ついつい自分の身体についてまで考えが及ばないことがしばしばあります。そんな時に優しく身体をなでることで自分の身体の輪郭を体感してもらい、気持ちをそこに戻すことができます。

触れることによる効果

 オキシトシンの分泌
絆ホルモンという別名が脳下垂体から分泌されるホルモンです。出産時の子宮収縮時や授乳時にたくさん分泌されるホルモンということですが、妊婦さんだけではなく、男性・女性すべての人が分泌されるホルモンだそうです。このホルモンが分泌されると何ともいえない安心感が生まれストレス解消にも役立つものです。
そんな素敵なホルモンをどうすれば出すことができるか?というと
優しくなでさすることで7、8分で分泌されるようになります。泣き止まない赤ちゃんや寝かしつける時に子守唄を歌って赤ちゃんの背中をさする母の姿まさしくこれです。大人になるとこういう機会も減ってきます。そこでタクティールケアなどが有効な方法ということになります。
包まれた手の感触・背中を撫でる感触、その心地よさでオキシトシンが分泌され、信頼の感情と穏やかに身を任せて眠りにつく。そんな相手を見ていて介護者もまた心地よさそうな相手から癒される・・これがタクティールケアの効果の一つです。

手の感触を生かす

手はいろいろな感触を知る能力があります。たとえば、老人の手を自分の手でやさしくマッサージすると、介護者と認知症の人とが手と手の感触がコミュニケーションの役割を果たします。
椅子に一人寂しそうに、うつむいて座っている老人の前に行き、下側から目線を合わせて座り老人をおどかさないように、目をみつめながら、ゆっくりとやさしくその手をとり、自分の両手の中に暖かくつつみこむようにして下さい。そしてゆっくりと手をさすりながら語りかけると、老人の寂しそうな目は、柔らかな安堵の目で見返してきます。この時、介護者と老人とのコミュニケーションが始まったのです。
私達の皮膚はいろいろな外部からの刺激(圧力、感触、微妙な動き、暖かさ、冷たさ、痛み)そして時には涙も感じることができます。重度の認知症老人にも、最後まで残っているのが、感情と共にこの感触です。手はその一番精密な感触機能を持っていて、介護者の手に包まれた老人の手が介護者の手を握り返す・・その手に老人の思いが込められています。
タクティールケアによって、老人が不安やさびしい気持ちにあるとき、介護者がしっかりとその手を包み込むことによって、安心を取り戻すことができます。老人が痛みを感じ、悲しみ、いらいらした時には、その痛みとストレスをやわらげてくれます。
グループワークでは  背中のタクティールケア 手のタクティールケアを皆でやってみました。

「心の癒しとアロマテラピー」 

認知症ケアポートらぽーるrapport 研修会
                                        2013,7/23
日本環境アロマ協会認定 アロマインストラクター兼アロマセラピスト 加田聖香
テーマ:「心の癒しとアロマテラピー」
1.アロマテラピーとは?
* アロマテラピーは、植物の香りの成分を利用して心と体を癒す自然療法の一つ。
* 20世紀の初めフランスで生まれた言葉
* だけど、その歴史は古く、世界各地で数千年も前から植物の香りを美容・医療に利用されていた。
* 芳香療法とも言う。
2.アロマテラピーの方法
*芳香浴    *吸入(*スプレーは1と2の中間?)    *沐浴(入浴・部分浴)
*湿布    *トリートメント    *セルフスキンケア

3.精油の経路
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4.精油の作用
<身体への作用>
鎮痛・鎮痙・食欲増進・ホルモン調節循環促進・排泄(利尿)・免疫賦活・強壮・抗菌・抗ウイルスなど
<皮膚への作用>
殺菌・循環促進・保湿・柔軟・収斂作用など
<心への作用>
 鎮静・興奮・情緒安定・不安軽減・集中力・高揚など
 1.なぜ嗜好性が出るのか?
 2.香の思いこみ効果
 3.精油の選び方
5.精油の種類
花系   ハーブ系   樹木系   柑橘系   (樹脂・心材系)   (スパイス系)
※ 他にも7つとか8つとかに分けている。
6.本日の精油(6種類)
  イランイラン(花)
  <身体>ホルモンバランスを整える。生殖器系に働く。
  <精神>気分をリラックスさせ幸福感をもたらせる。不安・ストレスを和らげる。
  ラベンダー(花)
  <身体>鎮痛作用・抗炎症作用・殺菌作用がある。火傷の手当は有名。免疫力をあげる効果もあり、感染症予防も期待できる。
  <精神>自律神経のバランスを調整する働きがあり、ストレスや怒り、不安などを抱えた心を癒し、リラックス出来る。安眠効果があると言われている。
  ペパーミント(ハーブ)
  <身体>頭痛・吐き気などに有効とされている。呼吸器系の症状に効果あり。
  <精神>リフレッシュ・気持ちをすっきりさせる。集中力アップ。
  マジョラム(ハーブ)
  <身体>血行促進・体温調節作用などにより、冷えやむくみに役立つ。筋肉痛や月経痛・肩こりの痛みを和らげる。便秘解消にも。呼吸・消化・不眠に効果あると言われている。
  <精神>自律神経の調整。悲しみや孤独の解消。気持ちを楽にしてくれる。
  サンダルウッド(樹木・心材)
  <身体>殺菌作用・抗炎症作用あり。泌尿器系の不調の改善。
  <精神>深い鎮静作用があり、緊張や興奮を静め、心を落ち着かせてくれる。
  ベルガモット(果実)
  <身体>消化促進・消化器系の不調を和らげる。神経系の胃腸不良に。
  <精神>鎮静作用もあるが気分をリフレッシュして明るくしてくれる。
7.実習
「それぞれの精油に対する自分のイメージを感じてみましょう!」

大切な注意事項
1.原液を直接肌に塗らない。
2.誤って精油の原液がついたら大量の水で洗い流す。
3.精油は基本的に飲まない。
4.点眼しない、入らないように
5,火気厳禁
6.精油とよく似た類似品に注意
7.子どもやペットの届かない場所へ保管
8.精油はしっかりキャップを締めて冷暗所へ保管
9.精油の特徴(それぞれの注意事項がある)を理解して使う
10.濃度に気をつける
11.お年寄り・妊婦・乳幼児への使用は注意(できれば 専門家に相談)

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『バリデーションへの誘い(いざない)』

講師:藤田光一先生
場所:甲府市朝気ぴゅあ総合

『困難事例への関わり方をロールプレイで体験』 NEW!

復習 バリデーション

バリデーションの15の基本テクニック
バリデーションにおいては、次の15の基本テクニックが設定されており、それらを認知症高齢者のレベルに応じて使用することが、具体的な方法として考えられています。
① センタリング(精神の統一・集中) ②(高齢者の)好きな感覚を用いる
③ オープンクェスチョン(開かれた質問をする) ④ リフレージング(キーワードを反復する)
⑤ 極端な表現(最悪・最善の事態を想像させる)  ⑥ 反対のことを想像する
⑦ レミニシング(思い出話をする) ⑧ (真心のこもった)アイコンタクト
⑨ 曖昧な表現  ⑩ はっきりとした低く、優しい声で話す ⑪ タッチング(触れる)
⑫ キャリブレーション(感情を観察し、映し出す) ⑬ 音楽を使う
⑭ ミラーリング(相手の動きや状態に合わせる) ⑮満たされていない人間的欲求と行動を結び付ける

POINT:タッチング

タッチングとは「触れる」というテクニックです。このテクニックもミラーリングと同様に、初期の認知症の方には不向きなテクニックです。しかし、見当識障害がある程度進行した認知症高齢者には有効とされています。認知症の症状の進行とともに、高齢者は強い喪失感や孤独感を呈するようになります。かられにタッチングを試みると、彼らは自分が持ついくつかの基本的欲求(愛されたい・尊敬されたいなど)を満たすことが可能になります。
「アンカード・タッチング」と呼ばれる方法は「その高齢者にとって重要な意味を持つ人物を思い出させるタッチング」という意味です。高齢者とのコミュニケーションの中で、それらの人物が登場してくる際に使用することで、その人物を「恋しい」もしくは「感じたい」などの欲求を満たすことができます。
・母のタッチング:頬に手をあてて包み込む
・父のタッチング:頭頂から後頭へ撫で下ろす
・子供のタッチング:首の後ろをカリカリする感じ
・夫婦のタッチング:耳の後ろから顎の前の方へ
・友のタッチング:互いに肩と肩へのタッチング

ロールプレイング           

◎基本的理解
ロールプレイングは、日常のある課題場面でのいろいろな役割を、その場の参加者たちが言葉と行為で演じてみて、課題解決の手がかりを得る方法です。
◎ロールプレイングの意義
①自発性や創造性を発揮して問題解決する訓練になる。
 ②自分の行動の意味や感情、相手の思い、人間関係のパターン等について、様々な気づきが得られる。
 ③望ましい言動や撮りたい対応を、事前に試すことができる。
 ④日常生活で演ずることのない新しい役割を体験できる。
 ⑤学級集団や教師集団のまとまりを作ることができる。
 ⑥参加者のカタルシス(感情の吐露・浄化)や認知の変換などが得られる。
ロールプレイ シナリオ
認知症のある人と関わるとき「何にもわからず説明するのが難しい人」と思っていないでしょうか?
訪問ヘルパーの関わり方を例に、コミュニケーションのポイントを考えてみましょう。
ケアする人の言葉かけによって認知症のある利用者の能力が発揮され、コミュニケーションが深まると、認知症のある利用者のその人らしい生活が具体化できる・認知症ケアが平易になり効果的で楽しくなる。
① AヘルパーとBさんの場合(その1 家事援助)
② AヘルパーとBさんの場合(その1 入浴援助)
③ AヘルパーとBさんの場合(その1 物盗られ)
④ AヘルパーとBさんの場合(その1 デイサービスの送り出し)

顛末記

当日は4つのロールプレイシナリオを参加者の中から演者希望者がでて、良い例・良くない例のシナリオを体験しました。AとBの役を演者が交代して行うことで、ヘルパーとお年寄りの両方が体験でき、それぞれの人の気持ちの動きが体験できました。
多少のアドリブはご愛嬌ということで、乗りに乗った事例になりました・が、ちょっとアドリブを入れすぎて、ストーリーが意図通りにならず泥沼になってしまった事例もありました。
それは、意図というものの存在を体験する(ある意味で)いい経験になったと感じました。
グループワークも5回目になり、参加者が受け身的な講義ではない勉強に慣れてきたということだと思っています。かなり積極的に、参加する・意見交換する・質問する・呼びかけるなどの行動の変化が出てきました。頼もしい限りです。

実は、働いていた訪問看護ステーションが解散になり、この機会にということで新しい年には色々な意味で認知症の人にふれ合う機会を作る(充電)をしたいと考えています。少し、認知症の人とふれ合う機会が減って、参加者のニーズから離れているような不安をもったものですから・・・。来年は、ちょっと充電期間を頂いて春からまた、グループワークを再開(放電)するつもりです。

それまで、ちょっとの間・・・・・電池切れでーす


2013.12.2
認知症ケアポートらぽーるRapport              主宰  松本 恭子





開設記念勉強会

2009年12月10日(木) 訪問看護ステーション エムステージ 開設記念勉強会をアピオにて開催。
テーマは「認知症の理解と家族支援」。
認知症の種類や認知症の方やご家族の状況、対応などについて話し合いました。

第2回 認知症の在宅介護≪家族の介護負担≫

2010年12月13日 (月)  
時間 17:00~19:00  
場所 デイサービス 虹の郷(J・I甲府第1マンション1階)
テーマは「家族が感じている認知症介護の負担感」。

第3回 認知症のBPSD(行動心理症状)への関わり方   

2011年年2月21日(月)
時間 17:30~
テーマは「認知症のBPSD(行動心理症状)への関わり方」。
心理的な問題、症状が進んでも残る感情機能などについて話し合いました。

第4回認知症の症状の理解と関わり方

2011年4月20日(水)
時間 17:30~
テーマは「認知症の理解(復習)」。

第5回 認知症の介護困難から;興奮・暴力 

2011年6月22日(水)
時間 17:30~
テーマは「認知症の症状(復習)」。

第6回 認知症の人とのコミュニケーション

2011年8月23日(火)
時間 17:30~
テーマは「認知症の人とのコミュニケーション」。
認知症の進行度によるコミュニケーションのポイントなどについて話し合いました。

第7回 認知症の幻覚・妄想・抑うつ状態への関わり方

2011.10.18(火)
時間 17:30~
テーマは「認知症の『幻覚・妄想・抑うつ状態への関わり方』」

第8回 認知症の症状への関わり方 

2012.1.24(火)
時間 17:30~
テーマは「認知症の症状への関わり方 『同じことを何度も言う・物への執着・作話など…』」

第9回 認知症の非薬物的援助①「回想法」

2012.3.13(火)
時間 17:30~
テーマは「認知症の非薬物的援助①「回想法」 ~認知症の人の昔語りから心の内を知り・ケアの糸口をつかむ~」。

第10回 認知症の家族支援 Part2

平成24年5月22日(火)
時間 17:30~
テーマは「認知症の家族支援 Part2」

第11回 認知症の人の家族支援Part3介護者の生活を守る

2012年 7月17日(火曜日)17:30~
テーマ:認知症の人の家族支援 PartⅢ 介護者の生活を守る 

1. こんなときどうする(食べ物の飲み込みが悪くなった 誤嚥する など)
2. 認知症の人を介護するご家族の介護負担について
◎介護者自身に関すること
≪精神的な負担・ストレスなど≫
  ≪身体的な負担≫
≪経済的な負担≫
◎本人に関すること
  ≪身体的なケア≫
  ≪精神的なケア≫
◎サービスや医療等
 ・介護認定者の認知症への無理解/医療従事者の認知症への無理解
 ・入所できる施設がない/施設が少ない
 ・暴言や暴力でショートなどのサービスが制限される
 ・デイケアサービスセンター等の情報不足/相談先の情報が少ない
 ・専門医が近くに居ない
3. 認知症の人を介護する人
≪働き盛りの負担大 介護開始初期と介護者の年齢に要注意≫
4. 多い、息子から親への高齢者虐待 
5. 高齢者に対する虐待とストレス
6.介護者の生活を守るとは・・・

○在宅介護を続ける秘けつは? 認知症高齢者を介護する心構えは?
介護を楽にするコツがあるとすれば、それは、「一人でがんばりすぎないこと」。
これは介護を放棄することではなく、認知症高齢者ができること・やろうとしていることまで手を出さないということです。危険を伴うことは別として、介護に携わる時間を短くし、介護者自身の生活に十分なゆとりをもてる方法を考えましょう。そのヒントが以下にあります。
1. 時間がかかっても、できることには手も口もださない。
2. できないことを無理にやらそうとするのではなく、手を貸す。
3. 危険なこと以外には、見てみないふりをする。
4. 説得や訓練は時間の無駄。
5. 他の家族も介護に巻き込む。必要ならば猫の手も借りる。
6. 遠くの親戚より隣の他人。
7. これまでの介護者の生活パターンはできる限り変えない。
8. 自分の自由な時間を多く持つ。
9. できるだけ多くの介護サービスや制度を利用する。
10.介護は生活のすべてでなく、その一部にする。

第12回認知症介護家族の支援―認知症受容のプロセスを支える―

平成24年(2012)9月18日(火)17:30~
テーマ:認知症介護家族の支援
    ―認知症受容のプロセスを支える―
 ◎こんな時どうする
  “家族には同じことを繰り返し言うのに、訪ねてきた人(娘や親戚)に言わないのは??”
記憶障害:「記銘」、「保持」、「追想(あるいは想起)」の障害
即時記憶、短期記憶の障害が目立つ。長期記憶は保たれていることが 多い。思い出せない、覚えられない数分前の出来事を忘れる  何度も同じ事を聞く、言う。新しいことを覚えられない  最近の出来事は話の内容にはない(気がかりと昔の話)。
訪ねてきた人(娘や親族)に言わないで、介護している同居家族には「同じことを繰り返し言う」
同居の家族は自分の世話をしてくれる一番心許せる(素のままでいられる)人だからです
繰り返し言う背景:認知症の人の記憶障害は、古いことは比較的よく覚えていても新しいこと、しかも、直前のことが覚えにくくなっています。さっき話した、聞いたという事実をすっかり忘れてしまっていることが多いのです。認知症の人自身、何度も同じことを話したという思いはなく、たとえ話したかも知れないと思っていても、はっきりしないので、確かめるためにも、もう一度話しておきたい、聞いておきたいという心境になります。
対応:介護者は、「さっき聞きましたよ」とか「何回言ったら気が済むの?これで5回聞きました!!」という対応は避けましょう。認知症の人は、初めてのつもりで話しているのです。認知症の人にとって5回目という認識はないので、初めてのつもりで話したのに、それを否定されると混乱し、怒ったり気持ちが落ち込んでしまいます。

1.介護家族が認知症を受けとめるプロセス
認知症介護者の家族がたどる「心情の変化」・「介護者の心理的ステップ」
第1ステップ:驚き・戸惑い・否定
 第2ステップ:混乱・怒り・拒絶
 第3ステップ:割り切り  
第4ステップ:受容
上記で述べた第2ステップが、最も辛い時期です。拒絶から介護拒否に陥るケースもあります。
「介護職の方は、仕事時間が終われば介護から解放されます。しかし家族は24時間365日介護の連続です。」「介護者にとって、最もつらい不安や混乱の時期にこそ、適切な指示が受けられ、相談できる場所が必要であり、そこで一人ひとりにあった的確なアドバイスや支援が受けられることが必要です。」

介護者・家族の心や身体の健康づくり
■社会的支援の利用
■家族同士の協力と相互理解
■介護者自身の介護に対する心の持ちよう
出展:NPO法人 ピュアメイルスタジオ

第13回認知症の人の喜怒哀楽と向き合う  ―ノンバーバル・コミュニケーションの効果―

2012.11.20(火曜日)17:30~
テーマ:認知症の人の喜怒哀楽と向き合う  ―ノンバーバル・コミュニケーションの効果―
喜怒哀楽
 喜:喜び・嬉しい・快い・・・・プラス      怒:怒り・怒・怒る・怒鳴る・・マイナス
 哀:哀れ・哀しい・情けない・・マイナス      楽:楽しい・楽・心地よい・・・プラス

バーバルコミュニケーション(言語的コミュニケーション)とノンバーバルコミュニケーション(非言語的コミュニケーション)
バーバルコミュニケーションは、会話や文字、印刷物など言語的なコミュニケーションのこと。ノンバーバルコミュニケーションとは・言葉でなく目・ボディランゲージで伝わるもの・雰囲気、オーラ、醸し出すもの、顔の表情や声の大きさ、視線、身振り手振り、ジェスチャーなどによるコミュニケーションのこと。
視覚情報 (Visual) 見た目・身だしなみ・しぐさ・表情・視線 55%
聴覚情報 (Vocal) 声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポ 38%
言語情報 (Verbal) 話す言葉そのものの意味 7%
コミュニケーションにおいてもっとも大切なのは、言葉を使わないノンバーバルコミュニケーションです。
相手の目に映る第1印象は表情や身だしなみです。ですから、肯定的な表情や笑顔の良い表情は誰からも好かれることにつながります。また、身振り手振りを大きくすると実感があり説得力が生まれます。逆に、顔が無表情になったり、身だしなみが整っていなかったりしたら、本当に伝えたい情報が相手に伝わらなくなります。
ボディーランゲージ(身体言語・身振り言語)を活用する・・・
○ボディランゲージとは
・緊張するボディランゲージ
・安心する(親密な)ボディランゲージ
・コミュニケーションが円滑な(安心・ラポールrapportが作られている)時のしぐさ
・ミラーリング(バリデーション)
言葉だけでなく、身体で相手に訴える「身体言語コミュニケーション」
体の動作で伝わる意味
アイコンタクト   腕組み   顔をさわる   笑顔   首を横に傾ける
不安や緊張・落ち着きない状態を作るもの
・発達理論
 出生→光→音→皮膚感覚→声→やさしさ柔らかさの源→声と顔→自分と自分以外→
・阿保順子氏の「認知症の人々が創造する世界」から
 発達の逆走
・人見知り(発達論)  ・見捨てられ不安
○ボディランゲージの活用  ○ノンバーバル・コミュニケーションの活用
○タッチング  ○タクティールケア
○心地よい・快い・緊張をほぐす関わりにつながる 関わりの実際
(訪問看護で実践したこと、その結果)
 キーワード:・えがお ・視線 ・個別のボディランゲージ ・タクティールケア

2005年 デイサービス 学習会

2005年12月
デイサービス 介護職員学習会(高齢者と認知症の理解)
「お年寄りを理解するために」 

グループホーム協会 認知症グループワーク

山梨県 グループホーム協会 職員勉強会
≪認知症 グループワーク【行動・心理症状への関わり方】≫ 事例検討会  
2011.11.11(金)
事例を通してBPSDの対応を考える

デイサービス・施設利用者の感染対策

在宅で問題になる主な感染症の予防、対策について

“やさしい手”勉強会

“やさしい手”勉強会の資料  2010年3月18日(木)
Ⅰ.「認知症の理解とその家族のケアについて」
Ⅱ.「事例からの意見交換」

やまびこの会「認知症セミナー」

やまびこの会『南アルプス市認知症の人と家族の会』
認知症セミナー 対象:介護保険サービス事業所職員・やまびこの会会員
日程は台風15号の通過により ・10月19日(水曜日)に変更になりました。

テーマ
『認知症の症状への対処方法』
1.認知症の理解
2.中核症状・周辺症状(行動心理症状)
3.認知症の人の思い
4.認知症の症状への対処方法
5.認知症の人を介護する人への配慮

ユニット型グループホーム 職員学習会

ユニット型 認知症対応グループホーム 2005年8月

介護保険施設における看取りについて

2009年12月4日 
南アルプス市施設部会研修:《介護保険施設における看取り》  
対象:南アルプス市介護保険施設の介護支援専門員
1.研修テーマ:看取りについて
2.研修設定理由:介護施設での“看取り”がこの先ふえてくると考えられる。介護に携わる人の一人一人が看取りについて考え、理解を深める
3.研修目標:
①「看取り」「人間の死」について理解を深め 施設職員としての対応を理解できる
②その時の家族の思いを理解することができる

介護老人保健施設 職員勉強会

峡西老人保健センター                   
平成23年10月5日(水曜日)17:30~
テーマ:認知症 看護・介護の基本姿勢
≪看護職・介護職の役割≫

介護老人保健施設職員勉強会 認知症の理解

老人保健施設職員勉強会 ≪認知症の理解≫
2010.8.18  17:30~
参加職種・人数:医師・看護師・介護福祉士・介護支援専門員・ヘルパー・介護員  25名
勉強会の課題(学びたいこと)
1.訴えの多い利用者へのかかわり方
2.日常よく聞かれ気になる声掛けや対応の仕方「~しちゃだめ」「早く~して」「何してるの??」など
3.認知症で痛みや体調不良の訴えができない人に対する観察の仕方
4.認知症についての最新情報
5.他

勉強会内容
1.認知症を知る≪認知症は病気です≫
2.認知症になると何も解らないのでしょうか??
3.認知症の人はどんな状況に居るのでしょうか???
4.認知症の人にかかわる時に必要な介護者のスキルは≪イマジン【想像力】≫
5.認知症の人健康状態の観察に必要な知識・技術・想像力・そして観察力

精神科看護過程 勉強会

精神科看護過程の展開
峡西病院看護部時間外研修資料

認知症の理解

認知症はどんな病気?

ある日、ご家族の誰かに認知症の兆しが見えたら どうしますか…?
今まで築き上げてきた家庭や仕事、家族の営みの中に降って湧いた事態を 受けとめられるでしょうか。

次々に現れてくる認知症のBPSD(行動・心理症状)は この先どうなっていくのか…?
この先何時まで この生活が続くのか…これから先のことがまったく想像できない…?
こんな事を考えていると、目の前が真っ暗になってしまいます。
誰しも年をとるといろいろな機能が衰えてきます。目が見えにくい・耳が遠くなった・もの忘れするようになった……
認知症の症状が出始めたお年寄りの周辺では、「年相応の事」「個人差はあっても誰しも年をとると、もの忘れがあるもの」と、受け止めてしまい本気で考えようとしません。でもこの時当のご本人は、なんだか自分がだんだん自分でなくなるような漠然とした喪失感を感じているのです。年相応の変化でもあるかも知れませんが、それ以上に変化が加速しているのかも知れません。年相応とは身体や運動機能が衰えても、記憶力や判断力は衰えていない。そして、自分で考え行動できる。でも、ちょっと忘れっぽいという曖昧な形です。出来事の全てを忘れてしまうというのは個人差ではありません。
認知症のもの忘れと年相応の人のもの忘れの違いははっきりしています。前者は事柄の全てを忘れてしまいます。例えば家族とお花見に行ったとします。前者の場合は家に帰ってきて「今日のお花見楽しかったねぇ」と家族が声をかけたとき「お花見?そんなところ行ってないよ」ということになります。後者はお花見に行ったのを覚えていても「お花見弁当の中身の内の1~2品が何であったか思い出せない」と言う具合です。そんなわけですから、家族から「ダメじゃん忘れちゃって。せっかく連れて行ってあげたのに」などと言われて忘れたことを突きつけられますと、お年寄りの中の漠然とした不安が頭を持ち上げてきます。
認知症の始まりは記憶です。このため言ったことを忘れてしまったので、同じ事を何度も繰り返して言いに来るのでしょう。「花見弁当?そんなもの喰ってない」「ご飯はまだか?」になるのです。

認知症は病気です。

認知症は脳の病気です。生まれたときから脳細胞は働き続けています。記憶・作業能力・判断力・運動能力等々脳は休むことなく活動しています。その脳の働きはヒトが30歳位になると少しずつ衰えてきます。ですから、自覚できることがあるのです。それは、ものを覚える、学習するということが10代20代と比べて明らかに衰えてきたなぁーと、感じるのです。10代20代では自分は天才じゃないかしら?と思うくらい、知識が頭に入ってきました。それこそ水が染み込むように覚えることが出来たのです。30代くらいになって1度や2度繰り返すくらいでは事柄が覚えられないようになります。ここから年相応の脳の働きがイヤでも感じられるようになるのです。
認知症のお年寄りのMRI-CTなどを見ますと、健康な方のそれよりも黒い萎縮(しぼむ・ちぢむ)した画像が見られます。縮んだのは脳で縮んで働かなくなった脳は再生しませんから、縮んだ脳の中にある働き(機能)は発揮できません。記憶や判断力、運動・作業能力、などが脳の萎縮のためにできなくなってくるのです。このように、脳の萎縮または血管性認知症のように脳の内部血管の病変で起こってくるものもあります。これも、脳の障害された部分が働けなくなるという点で同じ事になります。
認知症は脳の病気です。脳のどこがどのように侵されているのかによって症状が少し違ってきます。ですから、年相応のもの忘れと同じように「じいちゃんしっかりしな!」と励ますのはお年寄りの自尊心と、何となく自分がおかしいと感じているお年寄りの不安を煽ることになります。不安や不穏になってしまい効果的ではありません。
まず、認知症は病気なので「このごろおかしいな、同じ事何度も繰り返すなぁ」と感じたら、家族で協力してよく観察しましょう。そして、やはり第六感が当たったと感じたら、専門医に受診しましょう。この病気になったら近所に恥ずかしいから黙っておく…ということをしないで、周りの皆で支えることが大切です。

認知症の人が抱えている心理的な問題

認知症の方の心 ~認知症になった時の気持ちは?~

認知症の方の世界を理解する

 認知症になると何も分からなくなり、徘徊や妄想、興奮など不可解な行動を起こすと考えている人たちがいます。たしかに認知症の人には、直前のことを忘れたり、今いる場所が分からなくなる、あるいは親しい人のことが分からなくなるなどの症状が現れてきます。しかしこれは認知症という「病気」が原因で起こっていることなのです。私たちでも今いる場所が分からなければ、帰ろうとします。もしこれを周囲の人が止めたり、帰れないように部屋に鍵をかけたりしたら、私たちでも大声をあげたり興奮したりするのではないでしょうか。「もし自分がそういう状況だったら・・・」ということを考えると認知症の人の行動は不可解でも何でもないのです。

もの忘れのつらさ

 もの忘れは誰にでも起こるものです。私たちでも「あれ?今ここに何をしにきたんだっけ?」と思う体験をしたことがあるはずです。しかし何をしに来たのかは、たいてい後で思い出すことが多いものです。もし思い出すことができず、しかもそのような状況が頻繁に起こったらどうでしょう。認知症の方のもの忘れは、このような状況が日常の中で頻繁に起こっているのです。私たちでももの忘れをしたときには不愉快な気分になったり、不安になるのと同様に、認知症の人たちもこのもの忘れが原因で不愉快で不安な日々を送っているのです。もの忘れを中心とする認知症という病気は、決して楽な病気ではなく、何より本人自身が日々つらい思いをしているのです。

できなくなってきたことの悔しさ

 認知症になると、仕事や家事など普段何気なく行ってきたことに失敗が見られるようになります。私たちでも失敗すると嫌な気分になりますし、今度はうまくやろうと思うでしょう。しかし認知症の方の場合、このような失敗がだんだんと大きなものになっていきます。認知症の方は、病気が原因でこのような失敗が起こっているということは理解できなくても、自分がこれまでうまくやってきたことができなくなったことには気づいています。さらに仕事上の失敗や家事の不手際が目立つようになり、周りの人たちからも指摘されるようになるために、悔しい思いをしたり、少しずつ自信を失っていったりするのです。これは何より認知症の方本人にとって非常に悔しい体験なのだということを理解することが必要でしょう。

2006年4月、認知症の人の「本人会議」が開かれ、当事者自身が自分の体験や苦しさを語る機会がありました。それまでは、『認知症の人といえば、物事がわからなくなって気楽だろう』などという誤解があったのですが、当事者が自身で語ることによって、認知症の人には漠然とした崩壊感があるということがわかってきました。
一般的に言って認知症の人には病感(自分が病気だという感覚)が無いと思われてきました。しかし、これは認知症の人自身が、自分がものを忘れてしまっていることに気づいていない(中核症状の記憶障害)ためといわれています。認知症の人は生活をしていく中で、今までの自分とは何となく違うという漠然とした感覚や、色々な場面で起こしている失敗や周りの人からの注意・叱責・指摘などから、病感に似た【何だか自分はこのごろ変だ】という感覚を感じている人もあるのです。もの忘れに気づかないから、そのことで困っていると意思表出することもできなかったのです。そして最近、認知症の当事者は、認知症を抱えた不安や苦しみを記録に書き留めたり、絵に描いたりして表すようになり、認知症の人が自分の体験などを周りの人に訴えて解ってもらおうとする機会が出てきたのです。
ただ、認知症の人が自分の言葉で今の苦悩を伝えることができるのは、病気の初期の段階だろうといわれています。認知症が進行してくると、その苦しみを周囲に伝えようとすることもできなくなってしまうからです。だからこそ、周りにいる私達が、認知症の人が抱えている心理的な苦しみや不安な思いを、認知症の人の行動や言葉の切れ端や表情から汲み取る努力をしなければならないのです。
ではどんな苦悩を感じているのでしょう、疾患の特徴から考えてみることにしましょう

「心理的な問題」①不快

一般的に健康な人でも、もの忘れしたとき思い出す方法として、初めに考えていた場所に戻ったりして、忘 れてしまったことが何であったか、一生懸命思い出そうとします。健康な人のもの忘れは「ど忘れ」であり、どうしても思い出せない事柄や、人の名前などがあるとき、思い出そうとしてもなかなか出てこないでイライラします。喉元に引っ掛かったような感じがとても不快で、健康な人でもそれがストレスになります。このも の忘れが頻繁に起こったときストレスは慢性的に続き、いつもいつも不安や不快な感情がつきまとう事になる のでしょう。認知症の人の心理的なストレスはこれに似ていると考えられています。

「心理的な問題」②不安

健康な人でも道に迷った場合、自分がどこにいるのか見当がつかなくなると不安になります。周囲の人が知 らない人ばかりであれば、不安はさらに大きくなるでしょう。認知症の人もそれはおなじで、住み慣れた街で 道に迷ったり、周囲の人が見知らぬ人に感じたら不安になることは想像できます。夕暮れで辺りが薄暗くなり自分がどこに帰ろうとしているのかが解らなくなった時も、不安は大きいと考えられます。認知症の人の記憶 は断片的に欠落していますから、そのため自分の体験が断片的になっていて、ブツブツと千切れた記憶の断片 どうしが繋がっていない状態だといえます。断片の寄せ集めがつながらずに、バラバラに散らばっていて繋が らないので、いつも漠然とした不安を抱えているのです。

「心理的な問題」③混乱

認知症の人は判断の障害があるので、自分の周りで起きている事柄(出来事)をしっかりと理解して行動す ることができません。この判断の障害によって認知症の人は混乱してしまうのです。健康な人でも、自分のペースではない、誰かのペースで急かされたりすると、普段は楽に出来ていたことも出来なくなってしまうこと はあります。健康な人でもそうなのですから、認知症の人では尚のこと、一度に色々なことを指示されたり言 われたり急がされたりすると混乱してしまいます。又、認知症の人は記憶の中でも直前の記憶(短期記憶)の 障害と断片的な記憶の欠落が起こるため、過去と現在が前後ゴチャゴチャになって混乱しています。 

家族支援

認知症の訪問看護に携わって3年目になります。先日、認知症の方を介護しているご家族が集まって集いが行われました。その集いに参加させていただいて、認知症のご家族を介護している人の現状を具に感じることができました。大学教授や様々な専門職が研究したり調べたり関わってみて解ったことなどを著わした様々な文献などから学ぶこともたくさんありますが…その方たちと一緒に話し・耳を傾けしているうちに、辛さや寂しさ・きつさや諦めなどを肌で感じとることができました。

本当にきれいごとではない内容が、ポツリポツリと語られていました。本当にきれいごとではないのです。そして、優しい気持ちになれなくなったとき・大声を出してしまったとき・思わず手を挙げてしまったとき・言い知れない情けなさと悲しみで自分を責めてしまうのです。自宅で家族を介護する人は、自分の生活の全てに介護が食い込んでいるのです。言い換えると介護が生活の一部なのです。

仕事を辞めて母親を介護している50代の男性は、介護疲れでボロボロになっているのに、まだ頑張ろうとして(頑張りきれていない)と、自分を責めていました。自分が看てあげなければ誰が看るのか??抱え込んで身動きができなくなってしまって・・・SOSが出せずに困憊してしまう例が後を絶ちません。

認知症ケア学会の神戸大会で出された研究論文でも『働き盛りの男性』の介護の姿が問題になりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・≪働き盛りの負担大 介護開始初期と介護者の年齢に要注意≫

働き盛りの40歳代の家族介護者は負担が増大しています。仕事や子育てなど、自分の生活との両立を社会がまだ支えきれていないことに問題があります。また、家族介護を始めたばかりの人、介護者の年齢が高い人≪主に老老介護≫では、負担が大きくなる傾向があります。専門職としての、彼らをどのようにして支えてゆくのか、考えてゆく必要がありそうです。

家族が認知症になることは心身の負担、経済的負担を家族にもたらします。心の負担としては、要介護者との関係性の難しさが、身体の負担としては、要介護者の昼夜逆転が認められました。また、今回の調査からは40歳台の働き盛りで負担が大きいことがわかってきました。また、介護が長期化するにつれ、家族が介護者という役割に拘束され、負担を募らせることは極めて大きな問題といえます。認知症家族介護では、虚弱高齢者の介護と比べて、要介護者とコミュニケーションをとることが難しくなることが特徴であり、家族は心理的な負担を強いられるからこそ、介護から離れることができる『預かり型』のサービスが求められるのでしょう。しかし、家族も、そして認知症の人も安心して地域で暮らすためにも、地域密着型サービスを今後はさらに充実させることが必要となるでしょう。

上記は平成22年10月23・24日 神戸で開催された≪認知症ケア学会大会≫で発表された研究発表の一部抜粋です。資料:第11回日本認知症ケア学会大会 2010.10.23/24  於・神戸

研究事業報告:認知症ケア専門士の現状と展望 :発表者 北村世都 より 抜粋・参照

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

訪問看護でも家族の支援は欠かせません。ご家族のこころのゆとりが介護を楽にすると考えるからです。介護に疲れたご家族は、腹の底から今の思いを吐き出して『泣いて・怒って・怒鳴って・呟いて・嘆いて・泣いて』そういう時間をもってからでないと、介護に向き合えません。そのために、私たちは訪問先で認知症のお年寄りに関わりながら、ご家族が想いを開放できる時間をとっています。ありったけの思いを吐き出してもらって・・じっくりと聴き役になって・ご家族の想いと対峙することが、今一番大切な仕事です。そこから認知症の家族支援は始まると考えています。

認知症の人を介護するご家族のつどいに参加して、介護家族の現状を具に見るにつけ≪介護の毎日で介護者が精神的・身体的・経済的にも・・・潰れてしまう≫ことがとても気がかりでした。殊に男性の介護者は完璧に介護しようとしたり、一人で抱え込んでしまったり、誰にも相談しなかったり、相談する所が解らなかったり・・・などで孤立無援状態に陥りやすいのです。どうか文末に掲する長谷川先生のメッセージを受けとめてほしいと思います。そして住所地の地域包括支援センター・認知症相談窓口・市役所高齢者福祉介護関係窓口などに、先ずは相談してほしいと切に思います。

『介護する家族の方へのメッセージ』

1.一人で介護を抱え込まないこと:24時間.365日のケア。これは公的な介護サービスの在り方として掲げられますが、実に介護家族の現状でもあります。認知症の人を暮らしの中で支えることは、一人では無理です。公的サービスを利用しましょう。

2.認知症の人の不安感を和らげる工夫をする:認知症になると、もの忘れや周りの状況がよく解らなくて不安になります。介護する人も不安でしょうが、認知症の人の不安はもっと根源的です。『大丈夫よ、私がついているから』という穏やかな語りかけや、優しい態度が第一です。

3.理屈で説得するよりも、明るいそして穏やかな気持ちを大切に:認知症の人の誤りや間違った考えを理づめで説得することは、それを理解する神経系が病気のために働きが乏しくなっているのでうまくいきません。とても大変な事ですが、説得よりも穏やかな対応を優先してみましょう。

4.今を大切にしましょう:かつての過去の姿を思い出すとつらい気持ちになるでしょう。『しっかりしてよ』などと言いたくなると思います。その人らしさを失っていく姿を見るのは辛いでしょうが、今できること、残されている働きを尊重しましょう。

5.完全主義はやめてみましょう:介護する自分が燃え尽きないように100%のケアという完ぺきな介護をゆるめてみましょう。常に全力投球しないこと。充分な睡眠と休息をとることを心がけてください。そのためにも第1の提案、一人で抱え込まないことです。

元 認知症介護研究・研修・東京センター長  長谷川和夫先生 『介護する家族の方へのメッセージ』より

認知症の人の家族はどんな状況にいるのか

介護家族の介護負担について
大変だったこと(身体・こころ・お金・サービスが少ないこと)

◎介護者自身に関すること
≪精神的な負担・ストレスなど≫
 ・終わりがない/先が見えない/症状の悪化/明日への希望がない/24時間気が休まらない
 ・夫や家族の理解がない/大変さを周りが理解してくれない/同居していない被介護者の家族に理解してもらえない
 ・自分の感情のはけ口がない/愚痴を言うと周りから責められる/逃げ場がない/孤立
 ・イライラしたり言葉がきつくなる事への自己嫌悪/ストレスがたまり爆発してしまう
 ・デイサービス等を利用した時に後ろめたさを感じる/精神的な自由がない
  ≪身体的な負担≫
 ・一人にさせられない/目が離せない/自分の時間がない/外出できない
 ・夜眠れない/夜間の体位変換・夜間のトイレの世話をしなくてはならない
 ・不慣れな家事をしなくてはならない(男性)/家事全般(男性)/食事の手間
 ・子育てとの両立

≪経済的な負担≫
 ・仕事ができない/仕事との両立/介護のために退職せざるを得ない/介護貧乏になる/紙おむつやデイサービスなど
 ◎本人に関すること
  ≪身体的なケア≫
 ・排泄物の世話/トイレの介助/おむつの拒否
 ・もの忘れ/夜の徘徊/徘徊による転倒
 ・介護拒否/入浴拒否
 ・歩行困難に伴う車いすの使用・介助
 ・火の始末

≪精神的なケア≫
 ・話を聞き入れない/自分のことは聞かせるが家族のことは聞かない/認知症であるという自覚がない/自分が正しいという態度や介護を受けるのが当然という態度をとる
 ・本人の意思が解らない/会話が通じない/意思疎通ができない
 ・暴言をはく/暴言暴力/情緒不安定/興奮する/怒る/注意すると機嫌が悪くなる
 ・被害妄想/遠くに住む娘にありもしないことを言う/外と家とで違う態度をとる
 ◎サービスや医療等
 ・介護認定者の認知症への無理解/医療従事者の認知症への無理解
 ・急に必要になった時ショートステイなどのサービスが利用できるかどうかの不安
 ・入所できる施設がない/施設が少ない
 ・暴言や暴力でショートなどのサービスが制限される
 ・デイケアサービスセンター等の情報不足/相談先の情報が少ない
 ・専門医が近くに居ない
 ・介護制度や高齢者医療制度が頻繁に変わり、余計に時間・神経を使う
 ・認知症の症状で万引きをしたのに『犯罪』にされた介護負担に影響するBPSD

≪抽出されたBPSD項目≫
・目的もなく動き回る ・食べられないものを口に入れること ・夜間不眠あるいは昼夜逆転 ・火の始末や火元の管理ができないこと  ・いろいろなものを集めたり、持ってくる ・見えないものが見えたり聞こえること ・泣いたり笑ったりして情緒が不安定になること ・暴言や暴行 
認知症の人の家族介護では、認知症の人との『関係性』が負担となる
認知症は認知機能障害をもたらす脳の疾患であり、結果的に認知症の人の人柄はあたかも変わってしまうかのように周囲には受け取られます。
これまで長い間家族の歴史を持つ身内が認知症になることは、進行に伴って少し変化する(ように感じられる)認知症の人の人柄を受けとめてゆくことを迫られるのです。
認知症は認知機能障害をもたらすだけではなく、周囲の家族との関係性障害をもたらす点が、本人・家族の双方にとって大きな負担となっていることがうかがえます。

≪働き盛りの負担大 介護開始初期と介護者の年齢に要注意≫
働き盛りの40歳代の家族介護者は負担が増大しています。仕事や子育てなど、自分の生活との両立を社会がまだ支えきれていないことに問題があります。また、家族介護を始めたばかりの人、介護者の年齢が高い人≪主に老老介護≫では、負担が大きくなる傾向があります。専門職としての、彼らをどのようにして支えてゆくのか、考えてゆく必要がありそうです。

まとめと考察
 家族が認知症になることは心身の負担、経済的負担を家族にもたらします。心の負担としては、要介護者との関係性の難しさが、身体の負担としては、要介護者の昼夜逆転が認められました。また、今回の調査からは40歳台の働き盛りで負担が大きいことがわかってきました。また、介護が長期化するにつれ、家族が介護者という役割に拘束され、負担を募らせることは極めて大きな問題といえます。認知症家族介護では、虚弱高齢者の介護と比べて、要介護者とコミュニケーションをとることが難しくなることが特徴であり、家族は心理的な負担を強いられるからこそ、介護から離れることができる『預かり型』のサービスが求められるのでしょう。しかし、家族も、そして認知症の人も安心して地域で暮らすためにも、地域密着型サービスを今後はさらに充実させることが必要となるでしょう。
結論:≪デイサービスのみ デイサービスとショートステイ などの利用が中心で、認知症ケアの介護者の介護負担を軽減するには「預かり型ケア」が不可欠である≫

上記は平成22年10月23・24日 神戸で開催された≪認知症ケア学会大会≫で発表された研究発表の一部抜粋です。
資料:第11回日本認知症ケア学会大会 2010.10.23/24  於・神戸
  研究事業報告:認知症ケア専門士の現状と展望 :発表者 北村世都 より 抜粋・参照

家族が感じている認知症介護の負担感

認知症の人を介護している家族の負担感について、例を挙げると

1.この先、病状の経過が分からないことに不安  180(86.1%)
2.自分の自由になる時間が欲しい 169(80.9%)
3.自分の身の回りのことが出来ないで困る  168(80.4%)
4.便・尿失禁、放尿があることで困る   159(76.1%)
5.この先、世話を続けなければいけないことが負担 158(75.6%)
6.伝えたいことがうまく伝わらないことが困る 154(73.7%)
7.患者の身の回りの世話をすることに負担を感じる 150(71.8%)
8.患者の話す内容を理解できないことが困る 134(64.1%)
9.介護者の身体不調で、世話をすることが不安・負担 134(64.1%)
10.時間や場所、人の顔が分からないことが困る 133(63.6%)

出典  今井幸充氏:『家庭看護者の精神保健.老年精神医学雑誌,3(10):1119(1992)』

まだまだ続くのですが、経済的な不安・異常行動や病状の悪化で対処方法が分からない・世話を手伝ってくれる人がいない・介護拒否に困る・家族や親戚が病気や世話に無関心・病気や介護方法の相談場所がわからない等々が挙げられています。上記の10項目はその中でも主な(上位にある)負担感となる内容です。
負担感の内容を見てみますと、認知症の症状からくる様々な困惑や負担感が現れるのは想像できますが、これらの挙がる以前に介護者がまず感じるのは別の所にあるような気がします。それは、この先認知症の症状や介護の日々がどこまで続くのか?病状がどのようになっていくのか?自分の人生はどうなってしまうのか?そして孤立無援の地獄に堕ちるのではないか???

先の見えない介護に、周りの理解や援助・手助けがあるのだろうか?という不安と孤立感が募ってきます。認知症の介護を生活の中に抱えている人達の抱え込みや孤立に目を向けなければ、介護地獄が解決されないと感じています。このように介護する家族の抱えている問題に、まず手助けをしないと介護者は救われません。認知症のお年寄りと介護する人と両方の人生を大切にしなければならないのです。認知症のお年寄りの毎日の世話はもちろん大切ですが、介護に携わる人が毎日のお世話で潰れてしまうのを避けなければなりません。

私の母は認知症でした。60代半ばで認知症と診断されました。私の姉弟の中で姉は母の様子の変化を受けとめましたが、兄は「そんなはずはない」と否定しました。父が亡くなり母は独り暮らしになりましたが、否認したままでした。ある日、母が自転車で道路の真ん中を通って兄の家に行こうとしていました。後ろからたくさんのトラックや自動車がクラクションを鳴らしながら付き従っていました。また、ある時は、近所の家や公園に自宅から出たゴミを捨てに行きました。そんな行動に民生委員から連絡が入り、母を家に一人でおけなくなった現実を認めたのです。

まず、母親が認知症になったことを受けとめたくないという感情が働きます。それでも、周りからの情報や近くにいる人などから状況を知らされ、認めざるを得なくなるのです。母の認知症への対処はそれから15年ほど続きました。
その間に、
1.だれが介護するのか? 
2.この状態がいつまで続くのか? 
3.介護負担は誰がサポートするのか? 
介護をめぐって、姉弟親族の間で様々なやりとりがあり、姉弟・嫁・親族の複雑な感情の縺れが露わになりました。長男の嫁が看るべきだ・・姉弟が順番に看るべきだ・・病院関係に働く人が看るべきだ・云々と、普段は仲の良い姉弟親族が解離してしまうほどの重苦しいやりとりがありました。話し合いの果てに介護する人が決められていったのです。もちろん、皆自分が背負いたくなかったので、介護することになった人もやむなく・・・ということでした。

介護を引き受けた人は、介護そのものが生活に入ってきます。介護が生活の一部になるのです。それまでしていた活動も、仕事も、社会的な立場も・・・・優先順位が変わってしまいます。この苦痛は介護をした人にしか解らないのかも知れませんが、実はそれではいけないのだと思います。介護する人が自分の人生を180度転換して介護に没頭することになるのは避けなければなりません。これこそが、介護負担の第一の原因になるからだと言えるからです。

介護家族も人間です。周りの人のサポートがあってはじめて、介護が出来るのです。そして、その介護の輪の中から、認知症の人の人生の締めくくりを大切にするケアが生まれるのだと思います。

BPSD(行動・心理症状)への関わり方

認知症を知る

認知症になってもできること、認知症に対してできること

●身体が覚えている

認知症という病気の中核となる症状は、記憶や判断といった知的機能・認知機能の障害です。しかし、知的な機能のすべてが、一度に失われてしまうわけではありません。以前から覚えていた知識や、印象深かった出来事の記憶などはまだまだ残っています。特に、家事や趣味などご本人がそれまでの生活でずっと続けていたようなこと、楽しんでやってきたようなことは、身体が自然に動くほどその人にしみついているものです。もちろん、その人がもっている力を発揮するための環境づくりは必要かもしれませんが、そうしたことを行えることは、ご本人にとってもうれしく、自信につながるものです。

●豊かな”こころ”

「認知症になると何もわからなくなる」「ボケたが勝ち」・・・本当でしょうか?

確かに、認知症の症状は時を経れば進行していきます。しかし、感情はあまり障害されず、かなり末期の段階まで残っています。例えばここがどこだかわからなくなっていても、ほんの少し前の出来事を忘れてしまっていても、悲しい、さびしい、嫌だ、うれしい、楽しいといった感情は、いつも感じています。また、感情の記憶は心に残りやすいものです。いつもできていたことができなくなったつらさや不安、覚えのないことで叱られた嫌な気持ち、自分らしさを発揮できたうれしさを生き生きと感じる心、そしてそれまでの人生を生きてきた誇りはもち続けます。

●治療

薬物療法:認知症の中核症状に対してはアルツハイマー型の認知症の進行を抑えたり緩やかにする治療薬や、脳血管障害の治療薬などが用いられます。また、抑うつ、妄想、幻覚、せん妄といった認知症の行動・心理症状に対しては症状に合わせた薬物療法が行われ、適切な処方があれば改善も望めます。

非薬物療法(心理療法):薬物療法以外に、心理・社会的な観点からのアプローチもなされます。これらは、(1)認知症があることによる不安や混乱、抑うつなどの軽減や、(2)認知機能の活性化などを目的に、十分な訓練を受けた心理士や精神科医などによって行われます。

*認知症の症状がみられる病気の中には早期発見・早期対応により治療可能なものがあります。専門の医療機関への相談・受診を。

●ケア

認知症に症状の中でも、特に行動・心理症状は心理的な要因が作用して出現してきます。そのため、適切なケアが提供されることによって、認知症のある方の心理的ストレスが軽減し、行動・心理症状を軽減できる可能性があります。また、適切なケアや対応を提供するためには、認知症について正しい知識をまずもち、その人のありよう・その人らしさを理解し受け入れてそれを尊重する、といった基本的な態度をもつことが大切です。

参考・引用資料:認知症介護研究・研修仙台センター

認知症についての理解を深める

認知症をよく理解するための9大法則・1原則
神奈川県・川崎幸クリニック院長
社団法人認知症の人と家族の会副代表理事  杉山孝博

認知症の介護において最大の問題は、症状の理解の難しさにある。今言ったことも忘れてしまうひどいもの忘れ、家族の顔すら忘れてしまう失認、金銭・物に対するひどい執着、徘徊、失禁など多彩な症状を、介護者は理解できす、振り回されてしまう。認知症の症状を理解し上手な対応が可能になるように工夫したのが、「認知症をよく理解するための8大法則・1原則」です。

第1法則:記憶障害に関する法則

銘力低下:話したことも見たことも行ったことも直後には忘れてしまうほどのひどい物忘れ。

同じことを繰り返すのは毎回忘れてしまうため。全体記憶の障害:食べたことなど体験したこと全体を忘れてしまう。 記憶の逆行性喪失:現在から過去にさかのぼって忘れていくのが特徴。昔の世界に戻っている。

第2法則:症状の出現強度に関する法則 

より身近な者に対して認知症の症状がより強く出る

第3法則:自己有利の法則 

自分にとって不利なことは認めない

第4法則:まだら症状の法則 

正常な部分と認知症として理解すべき部分とが混在する。初期から末期まで通してみられる。常識的な人だったらしないような言動をお年寄りがしているため周囲が混乱しているときには「認知症問題」が発生しているのだから、その原因になった言動は「認知症の症状」であるととらえる。

第5法則 : 感情残像の法則 

言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れる(記銘力低下の特徴)が、感情は残像のように残る。理性の世界から感情の世界へ。

a. ほめる、感謝する
b.同情(相づちをうつ)
c.共感(「よかったね」を付け加える)
d.謝る、事実でなくても認める、嘘をつく(悪役を演じる俳優の気持ちで)

第6法則 : こだわりの法則 

ひとつのことにいつまでもこだわり続ける。説得や否定はこだわりを強めるのみ。本人が安心できるようにもってゆくことが大切

a.そのままにしておく
b. 第三者に登場してもらう
c. 場面転換をする
d.地域の協力理解を得る
e.一手だけ先手を打つ
f.お年寄りの過去を知る
g.長期間は続かないと割り切る

第7法則 : 認知症症状の了解可能性に関する法則 

老年期の知的機能低下の特性から全ての認知症の症状が理解・説明できる

第8法則 : 衰弱の進行に関する法則 

認知症の人の老化の速度は非常に速く、認知症になっていない人の約3倍のスピード。正常の高齢者の4年後の死亡率が28.4%であるのに、認知症高齢者の4年後の死亡率は83.2%(聖マリアンナ医大長谷川名誉教授の報告)。

第9法則 : 介護に関する原則 

認知症の人の形成している世界を理解し、大切にする。その世界と現実とのギャップを感じさせないようにする

(C)1998-2010 Alzheimer’s Association Japan All Rights Reserved.
社団法人認知症の人と家族の会<旧呆け老人をかかえる家族の会>



上手な介護12カ条(杉山孝博)

第1条 知は力なり。よく知ろう。
第2条 割り切り上手は介護上手。
第3条 演技を楽しもう。
第4条 過去にこだわらないで、現在を認めよう。
第5条 気負いは負け。
第6条 囲うよりは開けるが勝ち。
第7条 仲間を見つけて心軽く。
第8条 ほっと一息、気は軽く。
第9条 借りる手は多いほど楽。
第10条 ペースは合わせるもの。
第11条 相手の立場でもを考えよう。
第12条 自分の健康管理にも気をつけよう。

ぼけとつき合う本音10カ条(家族の会)

1.3歩離れてじっくり介護
2.「愛情が第1」というけれど
3.周りの言葉にまどわされず
4.家族の暮らしあってこその介護
5.女性中心でなく男性の力も
6.「その日暮らし」の精神で
7.できる手抜きは勇気を持って
8.励まし合い、助け合う仲間の輪
9.「私でなければ…」とかかえこまない
10.楽しく智恵比べ

ぼけの人のために家族ができる10カ条  

作成;社団法人呆け老人をかかえる家族の会

1.見逃すな、「あれ、おかしい?」は大事なサイン
2.早めに受診を、治る痴呆もある。
3.知は力。痴呆の正しい知識を身につけよう。
4.介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
5.サービスの質を見分ける目をもとう。
6.経験者は知識の宝庫。いつでも気軽に相談を。
7.今できることは知り、それは大切に。
8.恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。
9.自分も大切に、介護以外の時間ももとう。
10.往年のその人らしい日々を。

(詳しくは(社)家族の会編「新ぼけの人の生活と対応」婦人生活社発行をご覧ください)

介護者の願い10カ条(家族の会福島県支部)

1.痴呆は病気です。初期には介護者以外の家族には理解しにくい状態があります。お年寄りの身辺で常に介護している人の話を、家族も兄弟姉妹も親戚もよく聞いてください。
2.お年寄りの話をうのみにせず、もの忘れ、お金を盗む、妄想、徘徊などの状態を時間をかけてよく知ってください。
3.介護者も混乱し模索しているので、介護者を孤立させないでください。
4.介護者の100%の介護を求めないでください。介護者は介護に工夫をしながらも、介護に疲れています。
5.介護者に「ご苦労さま」「ありがとう」「お願いします」など、いたわりの言葉をかけてください。
6.介護に慣れてくると、介護者とお年寄りの生活のリズムをできます。ないしょでおやつを食べさせたり、介護者の悪口を言うことなどしないでください。
7.介護を一人の人に押しつけないでください。介護者は日々の介護に疲れています。兄弟姉妹や親戚の人は、おかずの一品を持ってくる、泊まったらシーツを洗うなど手伝ってください。
8.介護を女性だけに押しつけないで、男性も介護へぜひ参加してください。仕事に疲れていても、せめて介護者のグチを聞いてください。
9.介護者を周囲の人々が支えてください。ホームヘルパー、デイサービス、ショートステイなどを在宅福祉サービスを利用するのを暖かく見守ってください。
10.医療や福祉にたずさわる人は、痴呆のお年寄りと介護者をよく理解し、適切に対応してください。

高齢者のケア

高齢者のケアに携わるとき、頭においておきたい疾患・症状・状態・陥りやすい問題などについて挙げてみます。高齢者に関わるときには、身体的・心理的・社会的特性をふまえて今起きている状況が何であるかを予測できることが重要になるからです。

老人の身体の特徴

            「老人のための家庭医学百科」「サクセスフルエイジング」より一部抜粋

 老化とはいったいどういうことなのでしょうか。外見で判断する人が多いと思います。また、体力の衰えや記憶力の低下などで感じる人もいるでしょう。このように老化は個人差が大きく、医学的に老化を定義づけるということは、なかなかむずかしいことです。老人を診察しても、内臓の働きは若い人とそう大きな違いはありません。したがって、このようなことだけから老化をみつけるということはできません。また、老化には時代差、男女差もあります。
 しかし、そうはいっても若い人と肉体的にまったく同じかというと、けっしてそうではありません。私たちの体は多くの細胞から成り立っていますが、この細胞そのものに老化としての現象が現れるはずです。ただ、それを具体的にとらえて、「これが老化現象である」ということを臨床面からだけでいいきることはむずかしいので、それには病理学的、生理学的、心理学的な多方面からの検討が必要です。
 私たちは生きているかぎり、歳をとればいろいろな変化、すなわち老化現象が起きるのは避けられないことです。老化を、普通は精神的な老化と身体的な老化の2つの面から考えていきます。
 あるアメリカの学者が精神的な老化の指標として15の徴候をあげていますので、列挙してみましょう。
  
(1)最近のことを忘れてしまう。昔のことは比較的よく記憶している。
(2)急ぎの用をしなければならないとイライラする。
(3)すべてのことに対して自己中心的になる。
(4)過去のことを繰り返し話す。
(5)よくグチをこぼす。
(6)目のまえで起こっていることに興味をもたない。
(7)他人にわずらわされず一人でいたい。
(8)新しいことを身につけにくい。
(9)騒がしいことに神経質になる。
(10)知らない人と付き合うことを好まなくなる。
(11)世のなかの変化についていけなくなり、疑い深くなる。
(12)自分自身の感情にとらわれやすい。
(13)過去の自分の苦労話をしたがる。
(14)新しい計画を立てることができない。
(15)つまらないものを収集して喜ぶ。
  
以上、15の徴候ですが、わが身にあてはまることがボツボツでていることに気がつくでしょう。
 
では、体に現れる老化現象にはどういうものがあるのでしょうか。それは、白髪が多くなった、老眼になり新聞が読みにくくなった、耳が遠くなった、皮膚のしわやしみが多くなり、弾力がなくなった、歯が抜けてそしゃくする力が落ちた、などです。また、骨や関節が衰え、体の動きがぎくしゃくしてきた、反射神経が鈍くなった、なども現れてきます。いずれも歳をとるに従って現れてくる現象(加齢現象といいます)で、これらをいちおう老化とよんでいます。

歳をとると、体の働きがどのように変化するのでしょう。まず、外からの刺激に対する反応が遅くなります。そして、外からの刺激により起こった体のなかの変化がもとの状態に戻るまでに時間がかかります。また、ウイルスや細菌に対する抵抗力が衰えたり、傷の治り方が遅くなったりします。爪の伸び方も遅くなったりします。そのほか、血圧の変化、視力の低下、暗がりになれるまでに時間かかるなど、いろいろな変化が生じてきます。
 
老人にみられる病気の特徴は、1人で多くの病気や過去に種々の病気をもつために症状が覆い隠され病気が重篤でも明瞭な症状に乏しく、しかも非定型的で診断、評価、鑑別が困難な例が多いことです。すなわち、
(1)多臓器疾患が多い。たとえば、心臓が悪いが同時に肝臓、腎臓も悪い。
(2)個人差が大きい。
(3)症候が非定型的で身体所見に乏しい。たとえば、肺炎になっても発熱しない。なんとなく元気がなく、意識がぼんやりしている程度、ということがあります。
(4)臓器の機能不全が潜在的に存在し、水・電解質異常、低栄養等を起こしやすい。潜在的に心臓、腎臓、その他の臓器の機能の低下、予備力の低下があって、容易に脱水症状を起こしたりする。
(5)慢性疾患が多い。
(6)薬物への反応が若年者と異なる。老人では肝臓での代謝が遅く、腎臓の機能も低下しているため薬物の排泄が減少したり、蓄積した薬物で中毒を起こしやすくなります。つまり、薬物に対する過剰反応や副作用が現れやすくなります。
(7)生体防御力が低下し、難治性である。
(8)加齢、老化による生理的変化なのか、病的変化なのかの判断が困難である。
(9)精神・神経症状や記憶力・記銘力低下のため、本人からの病歴聴取が困難である。
 
などがあげれらます。

いずれにしても、老化を避けることはできませんが、身体面、精神面で若さを保つことはできるはずです。では、歳をとっても若さを保つための心がけをいくつかあげてみましょう。

◎まず第一に、かかりつけの医師を決めておきましょう。

気軽に健康相談ができる1人の定まった医師を近くにもつことです。もし、重い病気にかかったときは、その医師の紹介を得て専門病院にかかるというようにするとよいでしょう。

◎第二に、いつも若々しくふるまうようにしましょう。

姿勢をできるかぎりよくし、服装も多少若づくりにすれば、自然に若返り、体のほうも元気になるものです。

◎第三に、適度に体を動かし、頭を使うようにしましょう。

足から歳をとりますから、平地であればどんどん歩くようにしましょう。運動量と運動時間は、年齢や体力に応じて決めなくてはなりません。老人では、もちろんスピード、耐久性を必要とする過激な運動は避けねばなりません。軽いリズム体操、速歩と普通の歩行の組み合せ等が適当です。多少疲労感を感じる程度まで行う必要があります。最もいけないのは家に閉じこもることです。運動により、このことはできるという体力に対する自信や健康感は老人の意欲向上のうえで、なにものにもまさるものです。
 
また、毎日興味のありそうな本を読んだり、新聞や雑誌に目をとおして世のなかの動きに感心をもつことです。
最後に、寒さから体を守ることです。冬のトイレ、風呂場などは寒くないような工夫をして、老人への危険性をできるかぎり取り除くように注意したいものです。
歳を忘れて暮らすことは幸福にちがいありませんが、やはり限度があります。こころを若く保ち、頭と体を適度に使い、いつまでも健康な生活を送るようにしたいものです。



認知症ケアポート『Rapport』の代表である認知症ケア上級専門士:松本恭子のOfficialWebです。認知症のこと、家族ケアのこと、定例勉強会のこと、松本個人の呟きなどお届けします。




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